ザ 寿司
以前、30歳前後の食い道楽が趣味という、転勤族のお兄さんの話を聞いた事がある。
野良犬
☆ そうですか。金沢にいらした事もあるんですか? どういう訳か、私はあそこに憧れちゃうんですよ。
食い道楽お兄さん
☆ なるほど。いいところなんでしょうねぇ、金沢は。そう言えば、金沢の人って面白いんですよ。「東京は、しょっちゅう大雪が降るところだ。」って、思ってるんですよ。
野良犬
☆ 東京はしょっちゅう大雪?
食い道楽お兄さん
☆ ええ、そういうニュースをテレビで見たらしくって、それが忘れられないみたいでね。珍しい事だからニュースになるねぇ。それを、いつも大雪って捉えちゃうんですよ。金沢の人って、本当に面白いって思いません?
野良犬
☆ (そうかな? 面白い人って、どこにでもいるよ。別に、金沢に限ったことではないんじゃない?)
☆ 金沢には、なんとなく、キラッと輝くものを感じちゃうんですよ、私は。
食い道楽お兄さん
☆ なるほど。なんたって、加賀100万石の城下町ですからね。文化も高いし、なんたって食べるものが最高でね!
野良犬
☆ たとえばどんな?
食い道楽お兄さん
☆ 魚に決まってるじゃないですか。
☆ 今、こうやって思い出しても、食いたくなりますよ。
☆ でも、寿司はダメだったなぁ。
☆ 「これだけ魚が旨いんだから、旨い寿司屋が必ずある筈だ!」って、100軒くらい探したんかなぁ? デモ、まぁまぁなのが2~3軒ってところかな? 寿司はやっぱり東京ですよ。
野良犬
☆ 前、和食職人の人に、聞いたんですけど、「刺身なんか、包丁の入れ方一つで、全然味が違う!」って、言ってたんですけど、これって、本当なんですか?
食い道楽お兄さん
☆ 本当ですよ。寿司職人が刺身に包丁を入れるとき、細い包丁で、サッと入れるでしょ。そうすると、余分な空気が入らなくって、歯あたりが違うんです。
☆ 太い、包丁でギコギコやっちゃったら、もうダメですよ。
野良犬
☆ これも、前、寿司職人の人に聞いたんですが、「回転寿司は寿司じゃない!」って、言ってたなぁ・・・・。
食い道楽お兄さん
☆ そのとおりですよ。あれを、寿司って言っちゃったら、寿司職人に失礼ですよ。「ネタ乗せ、おにぎり」って、ところかな?
☆ 寿司って、しゃりと、ネタとの絶妙なコントラストなんだよね。
☆ しゃりを炊くにも、新米だけじゃダメ。古米を程よくブレンドして炊くと、酢と程よく絡み合うんです。もちろんそのブレンドの割合はそれぞれのお店のマル秘事項でね。(少しづつ話ぶりに、熱が帯びてきたようだ。)
☆ 職人が寿司を握るのは、正に神業でしてね。
☆ しゃりは、強く握ったらダメ。空気が入って、ほんわりしたのが最高。
☆ ところが、ネタとシャリとが接するところは、キュッと強く握らないと、あの、本当の寿司の旨味は出せないんですよ。
野良犬
☆ その辺を、もう少しく言ってもらえませんか。
食い道楽お兄さん
☆ しゃりとネタとが強く接することで、ネタからはグルタミン酸という旨味が出て、しゃりの旨味と実に上手く絡み合うんですよ。
☆ だから、本当の寿司って言うのは、ネタとシャリとが、なかなか離れにくいですよ。回転寿司はすぐに離れます。
野良犬
☆ でも、本当にそういう風に、握れるものなんですかねぇ?
食い道楽お兄さん
☆ そりゃ、簡単にはできませんよ。何十年もかかって、そういう技を掴むんでしょうね。
野良犬
☆ そういうもんなんですか・・・・・?
☆ ところが、はなしは戻るんですが、どうして、金沢には旨い寿司屋がないんですかねぇ?
食い道楽お兄さん
☆ 必要がないからですよ。あんなに旨い魚があるんだったら、なにも、手を加える事なんかないでしょ。
☆ 江戸の前には、大した魚がいなかったから、ああやって、みんなで工夫して、
あんな凄いものができたんでしょうね。
☆ これはある意味、芸術ですね。文化ですよ!
野良犬
☆ (凄いこと言うね、この人。でも、本当かも?)
食い道楽お兄さん
☆ でも、最近の子供たちは、寿司って言うのは、くるくる廻って来るもんだと思っているみたいでね。だから、私の言う寿司は、子供たちからすれば、寿司ではないんですかねぇ。泣けてきますよ。本当に。
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